足利市は6月24日の定例記者会見で、中心市街地を流れる渡良瀬川に架かる中橋周辺で、堤防のかさ上げ工事が5月末に完了したと発表した。
中橋は1936(昭和11)年に架けられた橋長295メートルの3連アーチ橋。渡良瀬川の河川整備計画が定まる前の当時の基準で架けられたため橋の付近で堤防が周囲より約3メートル低く切れ込み、国の「重要水防箇所Aランク」に位置付けられていた。
架け替え事業は2020年7月に国、県、市が基本方針で合意し、2022年11月に起工式を行った。2024年10月に中橋を車両通行止めとし、2025年2月には現橋の3連アーチを下流側へ約12.5メートルスライドさせる全国でも珍しい移設工事を終えた。今回の堤防かさ上げ完了は、水害対策としての工程の節目となる。
中橋付近で堤防が決壊した場合の被害は甚大とされる。国による洪水時の氾濫シミュレーションでは、浸水面積約1030ヘクタール、被災人口約2万7000人、浸水世帯数約1万2000世帯、被害額約2,700億円と想定。1947(昭和22)年9月に発生したカスリーン台風では、市内では渡良瀬川の堤防が3カ所で決壊し、死者・行方不明者合わせて321人が犠牲になった。令和元年東日本台風では夜通しの水防活動を強いられるなど、浸水リスクを抱え続けてきた。
堤防はこの後、表面に護岸ブロックを設置する工事を11月以降に行う。全体の計画では、移設したアーチ橋の上流側に新たな車道橋を築くほか、取り付け道路やJR両毛線をまたぐ陸橋、歩行者用エレベーターの整備を順次進める。新しい中橋の開通は2028年春を見込む。
早川尚秀足利市長は「長年の懸案であり、中橋架け替え事業の大きな目的の一つであるかさ上げ工事が完了した。これにより、出水期における中心市街地への浸水リスクが大幅に低減し、本市の防災力が強化された。市民の安全・安心な暮らしに一歩近づいた」と話す。