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足利「大岩山多聞院最勝寺」で写経会 山林火災で損傷した文化財を救え

損傷した「大岩山多聞院最勝寺」の仁王像

損傷した「大岩山多聞院最勝寺」の仁王像

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 足利の「大岩山多聞院最勝寺」(足利市大岩町)で5月30日、写経の参加費で資金を集める「勧進写経会(かんじんしゃきょうえ)」が開催された。

ご本尊「毘沙門天」から外れてしまった宝塔や光背

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 同市西宮町の両崖山で2月21日に発生し、3月15日に鎮火宣言が出た山林火災の際、損傷した文化財や仏像の補修費用を集める有料の写経会。「勧進」とは、人々を仏道に導き入れ、善行を勧めるという意味で、寺院の建立や修繕のための奉納などをいう。

 同寺は日本三大毘沙門天の一つで、奈良時代745年に行基上人(ぎょうきしょうにん)が開いたとされている。大みそかに悪口を叫ぶことで厄を落とす奇祭「悪口(あくたい)まつり」や、元旦に額から流れ落ちる酒を飲み干すことで、ご利益があるという奇祭「滝流しの式」が行われる。県指定文化財や、市指定文化財、天然記念物の自生地などが敷地内にあり、山林火災からの避難で傷ついたり、破損したりした仏像や文化財の修繕費は合わせて7,000万円以上かかるという。

 火が迫る中、近隣住民や足利工業高校野球部の生徒の協力の下、運び出した文化財や仏像は鎮火後、戻す際に破損が多数見つかった。沼尻了俊(りょうしゅん)執事は「本来、専門の業者が何カ月もかけて運び出すものを急いで運び出したため、経年劣化した仏像が損傷してしまった。ご本尊の毘沙門天の宝塔などの装飾が外れている。門の金剛力士像はかかとが欠け、支えもなくなり、傾いて肘がお堂に接触している状態。これ以上重さをかけることができず、頭の部分を戻せていない」と話す。

 参加者の写経は本堂へ奉納し、翌日護摩修行でたき上げられる。佐野市から写経会に参加した高橋富士男さんは「山林火災は佐野からは見えなかったが、テレビで見て大変だろうと思っていた。損傷額は大きいが、立ち直ろうとしている姿に感動し、少しでも役に立てたらと参加した。書き始めは願いを込めたが、書いているうちに無心になった。この写経のことを知らない人が多いのは残念。また参加したい」と話していた。

 写経会は毎月第4日曜に継続して開催予定。沼尻さんは「ご本尊の毘沙門天、吉祥天、善膩師童子(ぜんにしどうじ)がお厨子(ずし)から外に出ているのは江戸時代以来260年ぶりの貴重な機会。復旧には時間がかかるが、後世に歴史をつないでいくためにも、多くの人に参加してもらえたら」と呼び掛ける。

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