プレスリリース

<黒字企業割合は前年から0.4ポイント上昇して53.9%>令和7年版「TKC経営指標(BAST)」を発行

リリース発行企業:株式会社TKC

情報提供:

TKC全国会(会長:坂本孝司/事務局:東京都新宿区)は、6月2日より令和7年版「TKC経営指標(BAST)」をWeb方式で提供開始します。
令和7年版BASTは昨年1年間(2024年1~12月)にTKC財務システムを利用して決算を迎えた年商100億円以下の中小企業の経営成績と財政状態を分析したもので、26万898社(全法人数の8.8%超)、1,196業種を収録しています。
I 令和7年版「TKC経営指標(BAST)」のポイント
◆令和7年版「TKC経営指標(BAST)」のポイント
1.黒字企業割合が前年から0.4ポイント上昇して53.9%となりました。
2.1企業当り平均売上高は3年連続増加し、239,874千円(対前年比103.0%)となりました。
3.経常利益が4年連続増加し、8,809千円(対前年比105.2%)となりました。
4.1人当り売上高・人件費がそろって3年連続増加しました。
5.短期借入金、長期借入金の前年からの増減額がそろって減少しました。

1.黒字企業割合は前年から0.4ポイント上昇

【産業別黒字企業割合の推移】

2024年の全産業の黒字企業割合は、前年から0.4ポイント上昇した53.9%でした。
産業別に見ると、「宿泊業、飲食サービス業」の黒字企業割合は全産業の中で最も低い状況にあるものの、令和5年から3.6ポイント上昇し35.7%となりました。
2.売上高が3年連続増加
2024年の全産業の売上高(1企業当り平均額)が3年連続増加し、239,874千円となりました(対前年比103.0%)。
産業別に見ると、すべての産業で売上高が3年連続増加しています。その中でも対前年比が最も高かったのは、宿泊業、飲食サービス業の110.9%でした。
3.経常利益が4年連続増加
2024年の全産業の限界利益は、売上高の増加に伴い、前年から4,256千円増加(対前年比104.2%)し、限界利益率も前年から0.5ポイント上昇(43.1%→43.6%)しました。
また、給与・賞与も1,292千円増加(対前年比103.7%)するなど、固定費合計が3,822千円(対前年比104.2%)増加した結果、全産業の経常利益は増加し、8,809千円(対前年比105.2%)となりました。
4.1人当り売上高・人件費がそろって3年連続増加
2024年の全産業の平均従事員数は、前年から0.3名増加(13.7名→14.0名)しました。
また、1人当り売上高(年)は17,149千円となり前年から173千円増加、1人当り人件費(年)は4,004千円と65千円増加しています。全産業の労働分配率(限界利益に占める人件費の割合)は、前年から0.3ポイント低下の53.6%でした。
5.短期借入金、長期借入金の前年からの増減額がそろって減少
2024年の全産業の簡易キャッシュ・フロー計算書を見ると、財務活動によるキャッシュ・インが前年から524千円減少の654千円でした。これは、短期借入金によるキャッシュ・インが前年から719千円減少の500千円となり、長期借入金によるキャッシュ・アウトが前年から309千円増加の525千円となった影響によるものでした。
II 「TKC経営指標(BAST)」における「優良企業」の条件
当指標では、同業種同規模の平均値を優良企業、黒字企業、欠損企業、黒字企業中位グループ、全企業の5つに分類し確認することが可能です。
「優良企業」の定義は、以下の6つの条件をすべて満たす企業です。
- 法人税申告時に税理士法第33条の2第1項に規定する書面が添付されている。
- 中小会計要領(中小指針)又は企業会計基準に準拠している。
- 限界利益額が2期連続で増加している。
- 自己資本比率が30%以上である。
- 税引き前当期純利益がプラスである。
- TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている。 

今後、TKC全国会は優良企業の育成にむけて、より一層力を入れて取り組みます。
III 金融機関における「TKC経営指標(BAST)」の活用
TKC全国会は、調査に協力したTKC会員と、全国20のTKC地域会、「中堅・中小企業の持続的成長支援」の覚書を締結する金融機関、信用保証協会へBASTを提供しています。利用金融機関数は363機関(4月30日現在)で、約7,500のBAST利用IDを発行しています。金融機関数の内訳は、都市銀行3行(都銀における利用行割合60.0%)、地方銀行51行(83.6%)、第二地方銀行31行(86.1%)、信用金庫198庫(78.0%)、信用組合47組合(36.4%)、信用保証協会27協会(52.9%)、その他6機関となっています。
利用金融機関では、融資審査等での比較データとしての利用に加え、中小企業の経営改善を支援する際のベンチマークとして活用するなど、中小企業金融における“目利き力強化に役立っている”と評価が高まり、年々、利用機関数・ID数とも増加しています。
今後も地域金融機関と連携し、中小企業の健全な成長・発展を支援してまいります。

◆神戸大学・経済経営研究所教授・家森信善氏の推薦のお言葉

神戸大学の家森信善教授より、「TKC経営指標(BAST)」を推薦するお言葉を、次のように頂いています。
〈推薦のことば〉
 TKC全国会の会員の皆さまにおかれましては、日頃より全国の中小企業の経営革新や経営改善支援に積極的に取り組んでおられることに、深く敬意を表する次第です。
 このたび、TKCから「TKC経営指標(BAST)」(令和7年版)が発刊されました。BASTはTKC会計人の関与先である約26万社の法人企業が税務申告をした財務諸表を母集団として作成されたものです。TKC会計人が標準業務として確固たる信念に基づいて実施されてきた巡回監査の集大成といえるもので、まさにTKC会計人にしか作れない、信頼性と実用性を備えた資料です。令和7年版は、令和6年1月期から令和6年12月期までの法人企業を対象としており、正確性と速報性を兼ね備えた経営指標です。
 足下の日本経済は、ポストコロナの経済回復が進む一方で、人口減少・人手不足、資源価格の高止まり、金利上昇など、多くの課題に直面しています。金融庁は近年、地域金融機関に対して、単なる資金繰り支援にとどまらず、事業者の実情に応じた経営支援を行うことを求めていますが、金融機関自身も、融資先企業の経営改善や事業再生支援において会計情報の重要性を強く認識するようになっています。たとえば、私が、経済産業研究所で実施した地域金融機関支店長アンケート調査では、「きちんとした会計を行うことは中小企業の経営力を高める」という考えに共感する支店長が95%を超えていました。今や、会計データの活用は、経営支援や企業との関係強化において、地域金融機関の基本的なスタンスとなっています。
 私が委員長を務めていた中小企業庁の「円滑な事業再生等に向けたモニタリングの高度化に関する研究会」は、企業・金融機関・士業が一体となり、企業の経営状態の変化を早期に捉え、適切な支援に結びつける仕組みの構築の重要性を強調しました。とくに、保証付融資の増加に伴い、信用保証協会や地域金融機関がデータを活用して効率的に予兆管理を行う必要性が高まっています。予兆を察知するためには、企業の自社データだけでなく、同業他社の数値と比較できるBASTのような資料が不可欠です。金融機関や税理士の皆様にとって、取引先・顧問先の財務状況を客観的に分析し、信頼性の高い助言や支援を提供する上で、BASTは大きな力になります。中小企業支援の現場において、BASTを活用することで、「経営者の気づき」を促し、それに応じた「支援者による適時支援」が可能となるはずです。
 中小企業が経営革新や経営改善を実現していくために、この「TKC経営指標(BAST)」が、最大限に活用されることを心より祈念しております。
令和 7 年 5 月 31 日
神戸大学 経済経営研究所教授 家森 信善

「TKC経営指標(BAST)」要約版・速報版

BASTは原則としてTKC会員以外への提供等を行っておりません。
ただし、より多くの企業経営者等に自社の現状分析や経営方針決定等でご活用いただくため、要約版および速報版を公開しています。
◇閲覧方法
下記のTKCグループホームページ「経営者の皆様へ」サイトから閲覧できます。
URL:https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
〈ご参考〉
<「TKC経営指標(BAST)」とは?>
TKC経営指標(BAST)は、TKC会員(税理士・公認会計士)が関与する中小企業の経営成績と財政状態を分析したものです。TKC会員が毎月継続して実施した巡回監査※と月次決算により作成された会計帳簿を基礎とし、そこから誘導された信頼性の高い決算書(貸借対照表および損益計算書)を収録データとしています。
これだけの精度と速報性を持つ中小企業の経営指標は、世界にも類例がなく、金融機関等から高く評価されています。令和7年版(2024年1~12月確定決算)の収録法人数は26万898社、分析対象は1,196業種に及びます。
BASTは個別企業の決算書を開示しているものではなく、2期比較が可能な、同業種同規模の3社以上の決算書を合算し、その平均値を優良企業、黒字企業、欠損企業、全企業、黒字企業中位Gの同類体系により表示しているものです。
※巡回監査:関与する中小企業を毎月および期末決算時に巡回し、会計資料ならびに会計記録の適法性、正確性および適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導すること。

【黒字企業割合と黒字申告割合の推移】

※1「BAST黒字企業割合」は、「TKC経営指標(BAST)」の「収録件数」及び「黒字件数」を基に計算しています。なお、「TKC経営指標(BAST)」の「黒字企業」とは、「期末純資産」及び「税引前当期損益」が、いずれもプラスである企業をいいます。
※2「国税庁公表黒字申告割合」については、2006(H18)年までは、国税庁「会社標本調査結果」における数値を採用し、2008(H20)年以後は、同庁「法人税の申告事績の概要」における数値を採用しています。

<収録企業における特性>
令和7年版収録の全企業データでは黒字企業割合が53.9%となっています。特に、
1.TKCの「FXシリーズ」で業績管理を行っている。(F)
2.TKCの「継続MAS」で経営計画を策定している。(K)
3.「税理士法第33条の2第1項に規定する書面」を実践している。(S)
――これら3つの条件に合致している企業の黒字企業割合は57.0%となっています。
 【BAST収録企業の黒字企業割合】

〈Fのみ利用企業〉
TKCの「FXシリーズ」で業績管理を行っている企業
〈KFのみ利用企業〉
FXシリーズを利用しながら、併せて「継続MAS」で経営計画をしている企業
〈KFS利用企業〉
FXシリーズと継続MAS利用で、「税理士法第33条の2第1項に規定する書面」を実践している企業

「TKC経営指標(BAST)」の著作権について

「TKC経営指標(BAST)」の著作権は株式会社TKCに帰属します。
「TKC経営指標(BAST)」の内容を論文等で引用又は参照する場合は、説明文として下記の文章を必ずご利用ください。
令和7年版「TKC経営指標(BAST)」(発行:TKC全国会)は、全国の260,898社の法人企業の令和6年1月期から令和6年12月期決算に基づく経営分析値を収録しています。
この「TKC経営指標(BAST)」は、TKC全国会に加盟する職業会計人(税理士・公認会計士)が、その関与先である中小企業に対し、毎月企業に出向いて行う「巡回監査」と「月次決算」により、その正確性と適法性を検証した会計帳簿を基礎とし、その会計帳簿から作成された「決算書」(貸借対照表・損益計算書)を基礎データとしています。なお、これらの決算書は、そのまま法人税申告に用いられています。

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