足利市月谷町の山林を購入した「日本山林再生」(宇都宮市)が5月23日、1カ月間にわたる間伐作業を終えた。
2021年創業の同社は今年3月、林野庁から森林計画認定を受け、4月23日から1カ月間、月谷町の山林約1ヘクタールの間伐を行った。足利の山林を購入したきっかけは、同社CEOの中村純さんが開業に関わったカフェ「パーラートチギ」(栃木市)で知り合った人から「足利の山を相続したがどうすればいいか」と相談があったためという。
栃木市出身で宇都宮市在住の中村さんは東京農業大学で林学を専攻。前職の不動産設計事務所「ビルススタジオ」(宇都宮市)の社内制度で就業時間の一部を自分で考えたプロジェクトに使えたことをきっかけに、大学卒業論文のテーマだった「林業で地域の新しい仕事を作る」企画に取り組み始めたという。
中村さんはプロジェクト開始当初、ビルススタジオの業務として林業を行う予定だったが、2019年に鹿沼市の古民家の持ち主から「家と一緒に山も売りたい」と相談を受けたことが起業を考える転機になったという。中村さんは「住宅や土地の売買方法は知っていたが、山はどこに売ればいいのだろうと疑問に思った。不動産としての山林を調べていく中で、日本の林業には企画会社が少ないと気付いた。山に関わる人を増やすためにも自分たちでやろうと起業した」と振り返る。
同社は、栃木県内に30ヘクタール、茨城県内に80ヘクタールの計110ヘクタールの山林を所有。山林を購入した理由について、中村さんは「林業は分業化されており、業務全体を知らないと企画を持ち込んでも他社に取り合ってもらえないと考えた。最初の一歩として数十年間、人の手が入っていない月谷町の山林を作業道の整備から手がけた」と話す。今回伐採した木材は、元の山林所有者が大平町に開業するカフェの建材の一部に使うという。
中村さんは「私たちがやってみた成功も失敗も情報発信することで『それなら私もやってみたい』と後に続く人を作っていきたい。副業で林業など多種多様な人が関わる仕組みを作り、大きな課題に取り組むための小さな歯車をたくさん作りたい」と意気込む。