足利市と足利市民文化財団は7月21日、国重要文化財の刀剣「山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)」を取得すると発表した。
この刀は、足利長尾氏の6代目当主長尾顕長(あきなが)が、1590年に刀工・堀川国広に作らせたもので、1962(昭和37)年に国の重要文化財に指定された。これまでに足利市立美術館(足利市通2)で企画展が、2017(平成29)年と2022年の2回行われており、刀剣ファンや、通称「審神者(さにわ)」と呼ばれる刀剣育成ゲーム「刀剣乱舞」のファンが訪れ、計6万3000人の入館者を記録した。市の試算で企画展による経済波及効果は、計9億円という。
現在は匿名の個人が所有しており、2022年6月の足利市議会一般質問をきっかけに、関係者で話し合いが行われ、所有者が市に譲渡する意向を示した。所有者は市を通じて「山姥切国広がゆかりの足利で大切に保管され、今後もこの地で多くの方々に見ていただくことが、この刀にとって一番良いことなのではないかとの思いに至りました」とコメントした。
2024年3月までに同財団が所有者と売買契約を結び、3億円で購入する予定。購入にあたり市は、日本美術刀剣保存協会栃木支部会員ら刀剣有識者5人で構成された刀剣評価委員会を設置。委員会は「国広の刀剣の中でも最高傑作であり、足利市ゆかりの品を足利の地で守っていくことに意義があると思われる。国宝級と言っても過言ではなく、市場でも認知度が高いことから、経済波及効果も加味すれば3億円の評価が妥当」と評価した。
購入金額3億円のうち2億円は同財団の資産から捻出し、残り1億円は市がふるさと納税やクラウドファンディング(CF)などを活用した「山姥切国広縷縷(るる)プロジェクト」を立ち上げ、寄付を募る。8月21日に募集概要を発表し、9月1日から2カ月間募集を行う。2025年1月から3月にかけて足利市立美術館で「山姥切国広展」を開催する。
同財団は、国広が足利学校で作刀したとされる国重要美術品の脇差し「布袋国広」を1989(平成元)年に取得している。同財団笠原健一代表理事は「山姥切国広と布袋国広の大小2振りを一緒に守り伝えていく機会を頂いたことは奇跡と言っても過言ではなく、重大さに身が引き締まる思い。今後も全力で文化財の保護と活用をしていきたい」と話す。