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足利の公民館で「陶壁画展」 忘れられた幻の壁画、一日限定で

陶壁画「北郷の四季の移ろい」と中島太郎さん

陶壁画「北郷の四季の移ろい」と中島太郎さん

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 陶壁画「北郷の四季の移ろい」が11月6日、北郷公民館(足利市利保町)で公開された。

同時展示された「足利行道山くものかけはし」

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 公開された壁画は、高さ2.6メートル、幅6メートル。1987(昭和62)年、同館の新築に合わせロビーに設置された。さまざまな形の陶板大小約200枚を使い、北郷地区の自然と四季の移り変わりを表現。葛飾北斎「足利行道山くものかけはし」のモチーフとなった行道山浄因寺(月谷町)の清心亭と天高橋を中央に配している。ここ10年以上は、公民館運営上の理由からロッカーなどで覆われ、大半が鑑賞できない状態だったという。

 公開は、3年ぶりに開かれた第36回北郷地区文化祭の目玉企画。文化祭終了後に原状に戻されることから、一日限定の展示となった。

 公開の実現に尽力した月谷町在住で民俗研究家の中島太郎さんは「長期間、全体像が見えなかったこと、関係資料が失われたことなどから長い間『幻のパブリックアート』となっていたが、以前から一般公開の機会をうかがっていた」と話す。公開に先立ち、調査・検証を進めたところ、小砂焼の窯元で東山窯(栃木県那珂川町、現在は閉窯)の専属作家で、群馬県出身の彫刻家・田中栄作さんの作品と確認された。作風のほか、壁画前に置いた家具などに隠れていた右下にある「EISAKU」のサインが決め手になったという。

 併せて、同壁画ゆかりの作品で田中さんがインスピレーションを受けたと考えられる「足利行道山くものかけはし」も展示。行道山浄因寺所蔵で、足利市出身の考古学者・丸山瓦全が同寺に寄進したとされる。

 公開の意義について、中島さんは「陶壁画は建物に付随することから、建物解体時に取り壊されることもある。保管が難しく、非常にはかない。地域の拠点にこのような貴重なものがあると知らなかった人も多いと思う。この機会に子どもからお年寄りまで、壁画の存在を知ってほしいと思っていた」と話す。

 当日は中島さんが会場で解説を行い、代わる代わる訪れた人たちが熱心に耳を傾ける様子が見られた。

 利保町に住む70代の女性は「友人と来場した。普段公民館を利用する際、見てはいたのだと思うが、存在を意識したことはなく、全体を見るのは今日が初めて。陶壁画のはかなさなどを中島さんから直接聞き、見ることができて本当によかったと思う」と話した。

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