足利の民俗研究家・中島太郎さんがこのほど、足利市北部の民俗の話を集めた書籍「北の郷物語 第4集」(岩花文庫刊)を出版した。
第1~4集(第4集は写真右) 昔の薬のパッケージを意識した装丁で
開発や宅地化が進む中、注目される機会が減り、忘れられつつある土地にまつわる伝承や民俗の話などをA5判の冊子にまとめた同書。中島さんが高齢者や神社仏閣の関係者らを取材し、執筆した記事を掲載する。
2013(平成25)年の第3集以来、10年ぶりの発行になる第4集は7月に出版。土地に根付いた伝承や古代史に関する謎解き、足利を訪れたとされる浮世絵師の葛飾北斎の絵にまつわるエピソードのほか、コロナ禍や森林火災、戦争遺跡にも触れ、1話当たり220文字に手描きの挿絵を組み合わせた54話を掲載する。表紙デザインを含む冊子制作は、全て中島さんが手がけた。デジタルの時代だからこそ、あえて紙媒体にこだわるという。
装丁は「昔の薬のパッケージ」を意識したという。裏表紙には「読用上の注意」として、家族からそう言われたというエピソードを下敷きにして「眠気を催す場合があります」などといった注意書きを掲載する。
中島さんは「第1集、2集と出版するうちに、偶然の出会いや紹介などにより新しい情報が舞い込むようになった。足利市北部に調査対象を絞ってはいるが、知れば知るほど奥が深く、やぶの中に分け入っていくよう。取材では、必ず2人以上から話を聞き、不明な点は文献にも当たる」と話す。「地元の人に『足利ってこういうところなんだ』と再発見・認識してもらうきっかけになれば」とも。
価格は500円。岩下書店(通2)、太平記館(伊勢町)、足利商工会議所(通3)などで販売する。