足利大学付属高校(足利市福富町)で3月7日、指揮者の佐渡裕さんによるバンドクリニックが開かれた。
同日開催された足利市民会館(有楽町)での「佐渡裕/反田恭平with(ウィズ)ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別編成」公演に合わせて、足利市みどりと文化・スポーツ財団と教育委員会が企画した。同校と足利短大付属高校(本城町)の吹奏楽部36人が参加し、佐渡さんの指揮の下、レッスンが行われた。普段から同吹奏楽部が練習曲としてメニューに取り入れているワーグナーの「エルザの大聖堂への行列」を指導。佐渡さんは途中で演奏を止めながら、部員に曲のイメージや作曲の背景を伝えた。
60分にわたるレッスンの中盤は、同校放送部による司会で質疑応答の時間が設けられた。佐渡さんは、愛犬の話をするなど笑いを交えながら生徒たちの緊張をほぐしていく場面もあった。生徒からの「上手な音楽とは」の問いに、佐渡さんは「それぞれの楽器が自分の役割を目指して一つの曲を作ること。バラバラの意見を持った人間が集まり、聴き合い、感じ合って『この音楽っていいな』と言える音楽を作ることが喜びであり、僕が音楽を続ける理由」と話した。
練習の最後は一度きりの全体合奏で締めくくられた。佐渡さんは「このメンバーで僕が指揮して曲を通しで合奏するのは一回限り。繰り返し練習を重ね、実際迎える本番は一回きりだということ。これまでのレッスンを思い出しながら演奏してほしい」と呼吸を整え指揮棒を振った。
チューバを担当する部長の近澤亮さんは「コロナで演奏会などができない中、悔しい思いをして卒業していった先輩たちの思いを受け継ぎ、この貴重な経験を今後の練習に生かしていきたい」と振り返った。